オンラインで最先端のVTuberクラブシーンが楽しめた「ASOBINOTES ONLINE FES ”VIRTUAL”フロア」オフィシャルレポートが公開

「イベントが持つ不変的な楽しみをオンラインでもそのままに。」として、新型コロナウイルスの影響で様々なジャンルのイベントの中止が相次ぐ中、オンラインを通じて日本中のサブカルチャーファンに向けた無料オンラインイベント「ASOBINOTES ONLINE FES」が6月28日(日)にSTUDIOCOASTで開催された。

総勢30名以上のDJやアーティストが出演したイベントでは、「CHARACTER」「GAME」「VIRTUAL」「AKIBAPOP」の4つのジャンルでフロアが分けられ、各ジャンルを代表するDJやアーティスト達が各フロアで熱演を果たした。

そんな日本を代表するサブカルチャーの中に、ここ数年で仲間入りを果たした「VIRTUAL」にスポットライトを当てて今回取材に挑んだ。まだまだ生まれたてのジャンルではあるが、VTuberと呼ばれる新時代のアーティストとインターネットミュージックとの深い関係性を合わせ持ったカルチャーとして今回抜擢された新鋭のジャンルが「VIRTUAL」だろう。

そんな「VIRTUAL」と馴染み深いDJ陣とVTuberプロジェクト「にじさんじ」から総勢7名のクリエイターが共演。それぞれが今だからこそできる最大限のパフォーマンスを繰り広げたショーケースを振り返ってみよう。

VTuberからは、にじさんじプロジェクトより「シスター・クレア」「健屋花那」「星川サラ」の3名が出演した。あえてDJイベントに精通していない3名が、今回のイベントを通じてサブカルチャーのライブイベントを体感していく姿が斬新的で、DJのパフォーマンスに興奮気味にトークを展開していく様子が印象的だった。イベントを通じて、初めて出会う楽曲や知っている曲が流れた時の高揚感を客観的に伝える姿は、さながら出演者という立場の垣根を超え、カルチャーのファンのような立ち振舞で視聴者との一体感を生んでいた。

トップバーターで登場したTAKUYA the bringerはHIPHOPを主体としたDJセットで、クラブらしい空気感を開幕から作り上げた。現地では意外性からなのか、唸るような声援が巻き起こり、彼らしいストイックな選曲がフロアをロックをした。ジャンルに囚われないのが「VIRTUAL」の特徴だが、終盤に向けて徐々にクラシックな楽曲たちが顔を出してくる。クラブらしい雰囲気から始まったプレイから「蒼い蝶」でフィナーレを迎える展開に、視聴者からも嘆きに似た声援が飛び交っていた。

続いて登場した、トラックメーカーとしてVTuberに楽曲提供を行い、自身もシンガーとして活動するYUC’eは「Night Club Junkie」「Sunset Tea Cup」などの代表曲を織り交ぜながら自身が手がけたVTuber楽曲など多彩なセットリストで会場を沸かせた。曲を繋ぎながらYUC’e自身が歌っていく姿は彼女ならではのプレイスタイル、よりライブ感の強いショーケースで現地でも体を動かす人が多く見られた。

今回「VIRTUAL」で最も楽しさが伝わったDJはNorで間違いないだろう。キズナアイを象徴する楽曲であり、ファーストシングルでもある「Hello, Morning」を手掛けた彼は、VTuberの音楽シーンには絶対外せないキーマンとして今回「VIRTUAL」のステージへと上がった。近年のVTuberクラブシーンのお手本のようなセットリストと、何よりも自分自身が1番楽しんでプレイする姿勢には、思わず配信とリアルの壁を感じなかった。

DJ WILDPARTYのパフォーマンスは、最初から最後までにじさんじの楽曲を披露。今やVTuberという枠を超えるエンターテイナーとして様々な分野で活動するにじさんじは、音楽でも幅広い活躍を見せている。その集大成を披露するかのように、説得力の暴力とも言えるパフォーマンスが約30分展開された。自身も大きく声をあげユニゾンする姿が印象的でにじさんじへの愛を感じるのと同時に、にじさんじのファンだけでなく見ている全員も楽しめるような見せ方はさすがとしか言いようがなかった。

今回は「VIRTUAL」をメインに取り上げたが、他の「CHARACTER」「GAME」「AKIBAPOP」どのステージも、最高級のパフォーマンスが展開されていた。カルチャーの礎を築き上げてきた年数を考えると、他のジャンルに比べて「VIRTUAL」というジャンルはまだまだ発展途上なのかもしれないが、黎明期からわずか3年足らずでジャンルを確立した勢いは計り知れない。
そして日本のサブカルチャーの特徴として、ジャンル分けされることはあっても、全てが線で繋がっているというのは大きな強みでもある。各ジャンルの成長や培ってきた財産が、新鋭である「VIRTUAL」を引っ張り上げていることも事実であり、「VIRTUAL」の成長が他ジャンルの刺激になることもある。今回開催された「ASOBINOTES ONLINE FES」は、その4つのジャンルの1つの集大成とも言えるイベントとなった。

文・編集 / 森山ド・ロ（@doro0157）