全滅の先に見えた新たなる世界、新たなる開拓史 ~ 『AZKi 5th LIVE R.I.P AZHOOD』ライブレポート







※本記事は、開拓者(AZKiファン名称)による『AZKi 5th LIVE R.I.P AZHOOD』ライブレポート選手権『#開拓者全滅ライブレポート頂上決戦』にて選出された蒼乃なす様のライブレポートです。

さあ、はじめましょう…!

歌姫の掛け声とともに開拓者の心は再び一つの場所へ集まった。

前回のAZKi 4thライブ『REPEAT THiS LiFE WiTH U(AZ輪廻)』からおよそ半年で世界は大きく変わってしまった。
それはリアルに生きる我々も、バーチャルに生きる彼女たちも例外ではない。生活にも様々な制約が生じ、我々の心にも少なからず暗い影を落とした。5月に開催が予定されていたAZKiの5thLive『three for the hood』も中止となり…しかし彼女たちはその音楽と歌声を止めることはなかった。
AZKi 5thLIVE R.P.T AZHOOD』は前述した『three for the hood』の代替公演として行われたニコニコ動画、bilibili(冒頭のみYouTube)での配信限定ライブである。今回はこのイベントのレポートをお送りする。

今までのライブと同じ、新たなAZKiのステージの幕開けを感じさせる『Overture』をバックに、『AZKi 5th LIVE R.I.P AZHOOD』のタイトルが映し出される。
そう、このライブは代替公演であるが正式なナンバリングの施されたAZKiのライブだ。失ってしまったかに思えたあの日そのものなのである。手抜きは一切ない、VJのchaosgroove氏、技術スタッフ、マネージャーであるツラニミズ氏、そしてAZKiがこのライブに掛けた強い思いを感じた瞬間だった。正直とても嬉しく、気持ちが高まっていくのを感じた。

一曲目は『ちいさな心が決めたこと』。AZKi自身が作詞作曲をつとめた楽曲であり、「痛みや戸惑いがあっても、ここで生きていこう」と前を向く決意を歌った曲からこのライブは幕を開ける。そしてある意味、今の様々な活動が制限される状況でも前を向いて生きていこうというAZKi自身の決意と、開拓者に対しても同じように前を向いてほしいというメッセージのようにも感じた。

2曲目は『虹を駆け抜けて』、3曲目に『さよならヒーロー』と明るく爽やかな曲を続けて歌い上げる。AZKiの力強く感情のこもった歌声。そして今までを遥かに超えるVJの映像演出があわさって会場の空気を一気に作り上げたように感じた。

ここで楽曲の雰囲気はガラリと変わる。AZKiのKawaiiを詰め込んだ曲たちが並ぶ。まずは『フェリシア』。ニコニコ動画特有のコメントも専用のコールである「おれのAZKiコール」で統一されていて、ライブの一体感を感じることができた。

そして続くのは『猫ならばいける』。こちらも可愛らしいAZKiと可愛らしい(?)開拓者の姿を楽しめる楽曲となっている

↑にゃーにゃーとコールを楽しむAZKiと開拓者たちの様子

そしてAZKiのMCをはさみセットリストは一気にクラブゾーンへ様変わりする。『Midnight Song』と『Take me to Heaven』、『Reflection』を続けて披露した。緩やかな中に思わず身体を揺らしたくなる楽曲のリズムにのってAZKiの美しい歌声がしっとりと染み渡り、VJの演出とあわせて会場を真夜中のダンスフロアへと塗り替えていく。その場にいる者を思わず聴き入らせてしまうような歌声だ。

MCで今日は何曜日ですか?と問いかけるAZKi。次の楽曲は『のんびりと、』。この楽曲は「今日は何曜日?」という歌詞に対して「○曜日!」とコールを返す楽曲となっている。
コメントもライブ当日である「土曜日!」で埋め尽くされていた。元気のいい開拓者たちのコールが聞こえてくるようだ。続く「リアルメランコリー」も、AZKiの楽曲の中ではコールをすることが定番になっている楽曲だ。可愛らしい歌詞を、可愛らしく歌い上げるAZKiを楽しむことができる。歌詞を読み解いてみると、実際にはバーチャルの世界で生きるクリエイターならではの葛藤が歌い上げられている。曲調の雰囲気と歌詞の意味との対比を楽しむのもこういった楽曲の楽しみ方のひとつなのかもしれない。

そしてそのまま間髪入れずに繰り出されたのは『miror』。この楽曲は2020年3月22日に行われた対バンイベント『LAST V STANDiNG vol.2』で披露するためにさめのぽき氏が手掛けた楽曲で、AZKiとエルセの2人のソロバージョンが存在しており、2つを曲名の通り鏡合わせにミックスすることでも楽しめる楽曲となっている。さめのぽきらしい雄大で清らかな情景を感じさせるメロディに観客は心を掴まれたことだろう。

MCにてAZKiは語る。中止になってしまった新宿BLAZEでの5thライブ、変わってしまった世界、当たり前だったことが当たり前ではなくなってしまった世界、それでも配信という形をとってイベントを楽しめることへの感謝を。
ライブ、生きてるって気がします
AZ輪廻がAZKiの最後のライブになるのかなと思ったこともある
だからこそひとつひとつのライブに全力で臨みたい
命尽きる、息が止まるまで歌っていきたい。AZKiがここに生きていた事を証明していきたい。」決してネガティブな意味ではない、あくまでも前向きで強い決意を感じる言葉だ。
そしてこのMCから次の楽曲『いのち』へとつながる。

もとより『いのち』はAZKiの楽曲の中でもつよく心を揺さぶる楽曲ではあるのだが、今回は少しその様子が違っていた。耳に入ってくるのはAZKiの歌声だけ。そう、アカペラだ。
正直MCの段階で次に『いのち』が来るのだろうという事は想像していたが、これは全くの想定外だった。本当にずるいし“分かってる”。私も感極まってしまった。
この『いのち』という楽曲はAZKiの歌声の特徴でもある感情や情緒を強く感じさせる歌唱を色濃く表している一曲だと感じる。数々のイベントにおいて、それぞれその日のコンディションだとか、会場の空気だとか、様々な事柄によってほんの僅かにその歌い方が、声の震えが、楽曲としての“色味”が変わる。そんな歌だと思うので、もし今回のイベントでAZKiを知った方はぜひ過去のイベントのアーカイブや切り抜き、そしてこれから先の彼女のイベントで少し気にして耳を傾けてみるといいだろう。

そして続けて『青い夢』である。もはや全滅させるつもりしかない組み合わせだ。いのち(そしてリアルメランコリー)と同じく作曲家 瀬名航氏が手掛けたこの『青い夢』は披露された段階から「いのちと青い夢の組み合わせは禁じ手だ」とも噂されていた。静かに、そして優しく歌い上げるいのちと対比されるように、青い夢は力強く、そして叫ぶように歌い上げられる。「守れないよ…。」の部分のAZKiの声の震えに、開拓者たちの心も強く揺さぶられた。

開拓者全滅のセットリストは開拓者たちを生き残らせる事を許さない。更に繰り出された楽曲は『世界は巡り、やがて君のものになる』だ。
この曲は先程の『miror』と同じくさめのぽきが手掛けた楽曲である。開拓者たちのが「国家」とも呼ぶ、「AZKiになる前のAZKiからの祝福」をテーマとしたこの楽曲で更にAZKiの世界はまさに大海原がごとく深みを増す。この瞬間開拓者は既に全滅しきっていたのかもしれない。

ここから後半戦!」と意気込むAZKi
立て続けのエモで流した涙を水分補給しつつ、ここからAZKiのライブは一気に盛り上がりを見せる。

Eternity Bright』と『Intersection』が立て続けに披露され、会場は再び熱を帯び始める。Chaosgroove氏によるVJも我々の視界を時に華やかに、時に激しく、綺羅びやかに彩る。

ほどよくフロアが温まってきたところでAZKiは上着を脱ぎ去り、会場のボルテージは更に高まっていく。「開拓者、まだまだ盛り上がれるでしょ?」と言わんばかりの演出だ。

そう、まだまだ盛り上がれるのだ。ここからが盛り上がるポイントなのだ。AZKiのライブは。
ラストスパートの宣言とともに聞き慣れたエレキギターの治安の悪い音色が響き渡る。楽曲の名前は『ERROR』だ。

AZKiの姿はBLaCKへと変わり、VJの演出もまさに最高潮といった感じで、ここから一気に激しさを増していく。思わず頭を振りたくなるような荒々しさに場内は包まれる。その勢いを止めるわけにいかない、止まるわけがないとばかりに立て続けに『I can’t control myself』が繰り出される。元々疾走感のある楽曲であるが、VJによる画面にノイズが走る演出もあってこのままMVとして使えるのではないかとすら思えた。開拓者の「ここで待って!」というコールも聞こえて来るように思えた。

まだまだAZKiのロックナンバーは止まらない。『ひかりのまち』だ。
コメントも更に白熱してゆく。今は自分は現場には居ないが、確かに現場にいる。そう感じさせるほどのパワーを感じた。

久しぶりの、7ヶ月ぶりのライブで心配だった。と当時の不安を吐露するAZKi。その期間を経て開拓者の前で一緒にライブを楽しめたことへの感謝と、自らの歌が誰かの心に響いて、何かの影響を与え、そしていろんな世界を開拓していけるように…と自らの思いを語った。

そして残る2曲として『フロンティアローカス』と『from A to Z』が披露された。
『フロンティアローカス』は「未来のAZKiから今のAZKiへのメッセージ」であって、まさに「開拓史」とも言える曲だ。普段であればサイリウムを振っているところ「ノシノシ」というコメントに埋め尽くされる画面。そして楽曲の途中で初期衣装に変化する演出はなんともニクい。

アンコール前の最後を締めくくるの『from A to Z』は、AZKiが歌ったあとを開拓者が追いかけるようにコーラスを挟むことで完成する楽曲だといえる。
今回は配信ということで、私もコメントという形でこのコーラスに参加した。AZKiひとりではない。開拓者も含め、全員の存在でライブが完成する。AZKiのライブの醍醐味のひとつだ。

ここで一旦ステージは区切りとなるが、すぐさまアンコールの声が響き始める。

あーずき!あーずき!

AZKi OFFiCiAL FANBOX「FRONTLiNE」にて事前に募集されていた開拓者のコール音声だ。AZKi本人にはサプライズで用意されたこのエモい(?)演出はサブタイトルでもある開拓者全滅にちなんで亡者の声と称されていて笑いを誘った。

開拓者からのアツいアンコールを受け、AZKiのアンコール・ライブは『Fake.Fake.Fake』から始まった。この楽曲は公式のコール動画が用意されており、数あるAZKi楽曲の中でも特に盛り上がる一曲だ。声によるコールだけでなく、開拓者同士で肩を組んで飛び跳ねたり、そして曲調も力強さの中にも爽やかさを感じるアッパーなこの曲でアンコールのつかみもバッチリのまま続けて『嘘嘘嘘嘘』が披露される。VJの演出もとても力が入っており、鎖とレーザーライトが入り乱れる様子にシビレるほどのカッコよさを感じた。

ここまでの2曲でFakeという同じ意味の名称をもつ楽曲が続き、何かしらの意図を感じてしまう。開拓者全滅で全滅するのは先程のメインライブではなく、このアンコールまでを含めてすべてが終わったときだから、先程の全滅はフェイクだ。ということだろうか。

更に続けて披露されたのは『自己アレルギー』。この楽曲も激しく、そして開拓者のコールを織り交ぜることで最高に盛り上がるナンバーだ。AZKiは、開拓者はここに居る!叫ぶように歌うAZKiとコメントでおっおー!!とコールを叫ぶ開拓者。両者はたしかにここに存在している

MCにてサプライズのAZKiコールに戸惑いを隠せないAZKi、ここまでで20曲以上、アンコールでも激しい楽曲を3曲連続で歌っても未だ疲れを見せない様子はまさに歌姫のそれだ。

楽しい時間はあっという間もう一周くらいしたい気持ちを押し殺しつつ、セットリストはいよいよ残すところ2曲となる。『without U』と『Creating World 2020ver.』だ。

without Uはタイトルの通り開拓者というU(You)無しではいられないAZKi(Uがない)という存在を、力強く歌い上げる一曲だ。今までも、これからもAZKiは開拓を続ける。そしてその傍らには開拓者の存在がある。開拓の道はこれからも続いていく。開拓していくぞ。という気持ちにさせられたと同時に、思わず「現場に、この空間へ行きたい」と涙が溢れるほどの感情の高まりを覚えたことは言うまでもない。

ここで最後のMCが入り、2つの重大発表として2ndアルバムとして『Re:Creating World』(今冬リリース予定)の制作決定告知、そしてAZKi新衣装プロジェクトが発表された。衣装については今までの衣装が治安の悪い衣装だったので、治安の良い衣装がほしいとのことだが、どんな衣装が出来上がるのか楽しみだ。

MCを終え、いよいよこのAZHOODも締めくくりとなる。
AZKiの最初の曲であり、象徴となる曲でもある『Creating World』。この曲を2020年ver.として再構築したものが『Creating World 2020ver.』である。やはりこの曲を歌わないとAZKiのライブは終われない
本来この楽曲に特別なコールは無かったが、「よかったら一緒に歌ってほしい」の言葉ももはや自然と出てくる。AZKiと開拓者が沢山の現場を重ねていく中で自然と染み込んだ歌詞(ことば)。私も自然と一緒に歌を歌っていた。

ラストサビ直前での2nd衣装から1st衣装へのチェンジという演出も実に刺さるものだった。

今回の『AZKi 5thLIVE R.I.P AZHOOD』は、総じて今までに見たAZKiのライブと比べてもすべての面において最高のクオリティに仕上がっていたと断言できる。
歌い上げた楽曲は3rdライブの20曲、4thライブの23曲を上回る26曲となり、AZKi自身の歌唱力や表現力にも磨きがかかっていた。前回から新たに加わった楽曲そのものも、それぞれの楽曲のクリエイターが持っている“色”にAZKiの歌声が上手くブレンドされ、調和した結果、どの曲もがアンセム曲級のインパクトを持っている。そしてVJによる映像演出もバックスクリーンと、配信ならではのオーバーレイによる迫力のあるものになっており、AZKiとAZKiチームは常に期待を上回ってくると感じさせられた。

“全滅”の先に

前回の『AZ輪廻』、そして今回の『開拓者全滅』を経て、AZKiと開拓者が向かう次なる世界はどんな場所なのだろうか。次のアルバムである『Re:Creating World』により再び創造される世界とは何なのだろうか。まだまだAZKiと共に開拓するこの道のりが楽しみで仕方ない。
未だ世界は厳しい状態が続いていることもあり、一度崩されてしまったものを取り戻すことは難しいかもしれない、そんな中でも考えうる方法で最良を目指して行きつつも、やはり声を張って、手を叩いて、肩をぶつけ、足を鳴らしてAZKiと開拓者全員で楽しめる世界へ辿り着けることを願ってやまない。それではまた、次の現場でお会いしよう。

2020.08.02 写真:蒼乃なす/AZKi official

セットリスト

01.Overture
02.ちいさな心が決めたこと
03.虹を駆け抜けて
04.さよならヒーロー
05.フェリシア
06.猫ならばいける
07.Midnight Song
08.Take me to Heaven
09.Reflection
10.のんびりと、
11.リアルメランコリー
12.mirror
13.いのち Acoustic ver.
14.青い夢
15.世界は巡り、やがて君のものになる
16.Eternity Bright
17.Intersection
18.ERROR
19.I can’t control myself
20.ひかりのまち
21.フロンティアローカス
22.from A to Z
EN1.Fake.Fake.Fake
EN2.嘘嘘嘘嘘
EN3.自己アレルギー
EN4.without U
EN5.Creating world 2020ver.

■AZKi プロフィール

ⓒ 2017-2020 cover corp.

仮想世界から⾳楽を通じて⼀⼈⼀⼈と繋がりたい。
時間や場所、空間を⾶び越えて出会うたくさんの愛や輝いた才能と⼀緒に、新しい世界を創るために転⽣した
仮想世界の伴⾛する歌姫。
(2020年7⽉現在 モデリング : 加速サトウ / ⾐装原案 : 焦茶)

ポップさと透明感のある楽曲シリーズ「AZKi WHiTE」
BiSH、BiS、GANG PARADE、EMPiRE等の楽曲を⼿がけるSCRAMBLESが全⾯プロデュース・攻撃的で疾⾛感のある楽
曲シリーズ「AZKi BLaCK」等の楽曲を展開している。

2019年2⽉14⽇にはバーチャルタレントサポートプロジェクトupd8に加⼊。
2019年5⽉19⽇には、VTuberときのそらや⽩上フブキ等が所属するVTuber事務所「ホロライブ」内の⾳楽活動に特化したバーチャルアーティストのプロデュース・マネージメントを⾏う⾳楽レーベル「イノナカミュージック」に所属を発表。

2018年12⽉よりオリジナル楽曲12曲連続リリース、
2019年11⽉12⽇には初のフルアルバム『without U』をリリースするなど楽曲を積極的にリリースしながら、5回のソロライブを開催しいずれも⼤成功に収めている。感動を⽣むライブパフォーマンス、熱量の⾼いファンの⽣み出す⼀体感が注⽬されているVsingerである。

・YouTube:http://ur0.work/Nu8M
・Twitter:https://twitter.com/AZKi_VDiVA
・note : https://note.mu/azkinote
・公式HP : http://azki-official.com/
・pixiv FANBOX『FRONTLiNE』 : https://www.pixiv.net/fanbox/creator/46440607
・公式オンラインストア : https://store.azki-official.com/